OCS RESEARCH UPDATE / 1640 / KAN’EI TENSHU / VERSIONED RECONSTRUCTION
1640年の江戸城は、
なぜ「白」から変わったのか。
前回の江戸城映像も、今回の家光・忠利編も、年代は同じ1640年です。違うのは年代ではなく、制作後に追加で読み込んだ史料と、その史料に与えたAuthority。OCSではこの差を隠さず、再構成の更新履歴として残します。

OCS research-updated reconstruction, 2026.09. 天守の正確な外装色を断定するものではなく、寛永度資料と、寛永天守を基礎とする後世の再建計画図を分けて参照した再構成です。
SAME YEAR / NEW AUTHORITY
1640は変わっていない。再構成の根拠が深くなった。
2026年8月に公開した初回の「EDO CASTLE 1640」では、江戸城を天守単体ではなく、本丸・本丸御殿・奥向・そこで働く人々まで含むWORLDとして組み立てることを優先しました。その段階の外観は、白漆喰を強く見せた一般的な近世城郭表現に寄っています。今回の家光・細川忠利編では、寛永天守そのものの構造図と、寛永天守を基礎にした後世の再建計画図を外観Authorityとして追加し、天守の素材・色調・量塊を再検討しました。
WHAT CHANGED
今回、何を変えたのか。
「白い城」をデフォルトにせず、暗い銅板系・黒褐色系の外装、白漆喰、木部、瓦を別素材として読み分けました。ただし全面黒色にもせず、現在の色は資料から導いた bounded reconstruction です。
寛永度の建方図・建地割から、五層の巨大な天守と高い石垣、内部構造のスケールを優先。一般的な「小さく優美な白天守」から離しました。
天守を主役にせず、低層の本丸御殿・門・櫓・石垣・堀を一つの政庁WORLDとして描く方向へ更新。今回の32CUTで描いた政務、待機、アクセス制御を外観へ回収しました。
背景から現代的な建物・塔状物を排除し、低層の木造屋根、大名屋敷・寺社・樹木を中心とした初期江戸の低い地平へ修正しました。
SOURCE CHAIN
今回、どの資料の「どこ」を使ったのか。
以下は全部を同じ強さで1640年へ投影したわけではありません。寛永度資料は構造・規模の直接Authority、正徳期の再建計画図は「寛永天守を基礎にした外観比較Authority」、幕末期の本丸御殿模型・図面は御殿の機能と巨大さを理解する比較資料として分離しています。東京都立図書館の資料画像は転載せず、公式の該当画像ページへリンクします。
『江戸城御本丸御天守閣建方之図』〔寛永度〕
寛永15年(1638)造営天守を描くとされる建方図。石垣内部を穴蔵とした五層六階、高い石垣、木組み・軒・内部構造まで読めるため、今回の天守の規模、量塊、層構成、石垣の高さの主要Authorityにしました。
『江戸城御天守建地割・江戸城御天守地繪圖』〔寛永度〕
寛永度天守の側面図・平面図。東京都立図書館の解説では五層建て、石垣内の穴蔵、近世天守でも最大級の規模が確認されます。今回の高さ感、各層の積み上がり、巨大天守としての読みを補強しました。
『江戸御城御殿守正面之絵図』〔正徳度〕
1712年頃の再建計画図で、東京都立図書館は寛永度の図面をもとにした計画と解説。五層五階、唐破風・千鳥破風、腰壁の銅板張りが示されます。1640年の直接図ではないため、今回の破風構成と銅板系外装の比較Authorityとして限定使用しました。
『江戸御城御殿守横面之圖』〔正徳頃〕
同じく寛永度建築に基づく再建計画とされ、解説には銅板黒塗りの壁、千鳥破風、唐破風、鯱鉾が明記されています。ここから「全面白漆喰」を固定せず、暗い銅板・黒褐色を含む外装へ再検討しました。ただし、これをそのまま1640年の色写真のように扱ってはいません。
江戸東京博物館「幕末の江戸城―本丸・二丸御殿―」
幕末期の本丸御殿復元であり、1640年の平面Authorityではありません。一方、本丸御殿が表・奥・大奥からなる巨大木造建築群だったことを理解する比較資料として使用。今回のC032では、「天守だけの城」に戻さず、低層の政庁・居住複合体を大きく見せるためのスケール理解に限定しました。
BOUNDARY
何がFACTで、何が今回の再構成か。
家光期に寛永天守が造営され、1640年には存在していたこと。寛永度資料が五層の巨大な天守と石垣・内部構造を示すこと。
正徳期再建計画が寛永度を基にし、銅板張り/銅板黒塗り、破風構成を示すこと。1640年の直接的な色記録ではありません。
寛永度構造資料と後世の寛永ベース再建図を重ね、白漆喰一色ではなく、暗色の金属・木部・白漆喰が混在する外観を採用すること。
暗色の具体的な濃さ、経年変化、低層御殿群の見え方、カメラ位置、個々の屋根配置、1640年の一瞬の空気感。
VERSION HISTORY
旧版は消さない。研究履歴として残す。
EDO CASTLE 1640 — EP01
WORLD全体を初めて接続した初期版。外観は白漆喰主体の一般的城郭表現が強い。作品自体は削除せず、当時のResearch Stateを示すバージョンとして保存します。
KAN’EI EXTERIOR / MATERIAL UPDATE
寛永度天守資料と、寛永天守を基礎とする後世の再建計画図を分離して追加。今回以降の1640外観では、この更新版を優先Authorityとして使います。将来さらに強い史料が出れば、再び更新します。
OCS METHOD
Historical reconstruction is versioned.
歴史再構成は一度公開したら終わりではありません。新しい資料を見つけ、既存資料の役割を読み直し、FACT / COMPARATIVE EVIDENCE / INFERENCE / RECONSTRUCTION の境界を更新する。その履歴そのものをOCSのアーカイブとして残します。
