白レギンス通勤
会社が好きなわけじゃない。それでも、ちゃんとして見える自分ではいたい。
一ノ瀬蒼は、仕事ができる。
だからといって、会社が好きなわけではない。
朝、白いレギンスに脚を通し、黒いトップスを整え、少しだけ不機嫌そうな顔で玄関に立つ。
それは毎朝の儀式だった。弱音を外に持ち出さないための、彼女なりの制服。
会社へ行く朝、
彼女は白レギンスを選ぶ。
駅、オフィス、帰宅後の部屋。一ノ瀬蒼の一日を、静かな距離感で切り取る。
朝の部屋には、まだ夜の気配が少し残っている。アラームを止め、カーテンを開け、スマホの通知を見て、 蒼は小さく息を吐く。今日も会社へ行かなければならない。
それでも、白いレギンスに脚を通すと、彼女の表情は少しだけ変わる。 仕事に向かうための服。人前で崩れないための服。会社が好きではない彼女が、 今日をやり過ごすために選ぶ、静かな通勤スタイル。
01. 朝は、いつも少し重い
アラームが鳴る前に、蒼は目を覚ました。窓の外はもう明るい。カーテンの隙間から差し込む朝の光は、今日も容赦なく部屋を仕事の日に変えていく。
ベッドの端に腰を下ろし、彼女は小さく息を吐いた。嫌いなのは仕事そのものではない。人の顔色を読み、空気を読み、何も感じていないふりをして一日を終える、その一連の流れが苦手だった。
それでも、白いレギンスを穿くと背筋が少し伸びる。弱音を外に持ち出さないための、彼女なりの制服だった。
02. 玄関でひと呼吸
パンプスのつま先を揃え、バッグを肩にかける。鍵を取る前に、蒼は必ず一度だけ立ち止まる。
「……行きたくない」
声に出すほどではない。でも、胸の内では毎朝きちんと言っている。言わないと、今日が始まってしまう気がするから。
玄関の鏡に映る自分は、涼しい顔をしていた。会社ではきっと、今日も“ちゃんとしている人”に見えるのだろう。その顔を確認してから、蒼はドアを開けた。
03. 駅までの道は、今日も同じ顔をしている
駅までの道は、いつも同じ匂いがする。コンビニのコーヒー、焼きたてのパン、誰かの香水、まだ眠そうな車の排気音。
蒼は人混みの中で、少しだけ目線を落として歩いた。急いでいるわけではない。ただ、立ち止まる理由がないだけだった。
信号待ちの間、スマホの通知を確認する。仕事のメールが一件。まだ始業前なのに、もう会社は彼女のポケットの中に入り込んでいる。
04. できる人、という仮面
オフィスに入ると、蒼の表情は自然に切り替わる。挨拶は短く、返事は的確に、資料の誤字は見逃さない。
周囲から見れば、彼女は落ち着いていて、少し近寄りがたくて、仕事のできる人だった。
でも本当は、昼休みの終わりが近づくたびに、胸の奥がほんの少し沈む。午後の会議、曖昧な指示、誰のものでもない空気の重さ。蒼はそれを全部飲み込んで、静かにキーボードを叩いた。
05. 帰宅後、ようやく自分に戻る
部屋に帰ると、蒼はまずパンプスを脱いだ。足元から一日がほどけていく。
バッグを床に置き、髪を軽く整え、部屋着に着替える。白いショートレギンスに履き替えた瞬間、会社の時間がようやく遠くなった。
誰にも急かされない。誰にも評価されない。冷蔵庫の音と、遠くの車の音だけがある。蒼はソファに座り、少しだけだらしなく息を吐いた。
06. 夜だけは、蒼のもの
コントローラーを手に取ると、画面の中で小さな電子音が鳴った。
昼間の蒼は、正しい言葉を選ぶ。間違えないように、波風を立てないように、少しだけ冷たい人に見えるように。
でも夜の彼女は違う。失敗しても笑える。負けてもやり直せる。誰にも見られていないから、ほんの少しだけ素直になれる。
画面の光が頬に揺れる。蒼は小さく笑った。明日の朝も、きっと会社は嫌いだ。それでも今夜だけは、ちゃんと自分の時間だった。
会社は好きじゃない。
でも、ちゃんとして見える自分ではいたい。
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『一ノ瀬蒼 白レギンス通勤』では、朝の通勤、駅、オフィス、帰宅後の素顔、夜のゲーム時間までを写真集として収録。 白レギンスで会社へ向かう彼女の一日を、静かな距離感でお楽しみください。
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