OCS KNOWLEDGE NODE 05 / BODY THROUGH LABOUR
海女はどうやって潜る?
海女漁は、酸素ボンベを使わず、自分の呼吸だけで海底へ入り、獲物を探し、採り、浮上し、海面で身体を戻して、また潜る仕事です。ここでは一回の潜水を、身体の順番で追います。

10-SECOND ANSWER
整える → 入る → 沈む → 探す → 採る → 上がる → 息を戻す → 休む。
海女の素潜りは、一回だけ深く潜る技術ではありません。短い潜水と海面での回復を何度も繰り返す労働です。三重大学海女研究センターの写真資料でも、海底の岩場を探る場面、浮上後に磯笛で息を整える場面、浮樽や磯桶につかまって身体を休め次の潜水へ備える場面が連続して記録されています。
ONE DIVE / BODY SEQUENCE
一回の潜水を、八つの動作で見る。
呼吸と身体を整える。
海面で浮具や船縁につかまり、前の潜水から呼吸と身体を戻します。海底の位置や波、仲間、船との距離もここで確認します。海女の仕事では、この「潜っていない時間」も潜水を成立させる重要な作業です。
入水して、身体の向きを下へ変える。
徒人海女は自力で潜水と浮上を繰り返します。地域や年代によって足ヒレの有無、浮具、衣服は違いますが、海面の水平移動から海底へ向かう縦方向の仕事へ身体を切り替えます。
海底へ潜降する。
徒人は主に比較的浅い磯場で自力潜降します。一方、船人海女では重りを使ってより深い漁場へ入り、船上のトマエと命綱で連携する操業形態があります。つまり「海女の潜り方」は一種類ではありません。
海底を見る。岩の裏、割れ目、海藻の根元を探る。
海底へ着くと、磯メガネなどで岩場を確認し、アワビ、サザエ、トコブシ、ウニなどを探します。1972年の水中写真説明には、海藻の根元、岩場の割れ目、岩の裏側を丹念に探る仕事が記録されています。磯メガネを見る →
見つけた獲物を採る。
アワビなど岩へ強く付着するものには磯ノミ・カギノミを使います。採取したものはスカリなどへ収めます。潜水時間には限りがあるため、探す、判断する、道具を使う、収めるまでが一つの連続した作業になります。海女の道具を見る →
海底を離れ、浮上する。
徒人は自力で海面へ戻ります。船人では海底からの合図を受けたトマエが命綱を手繰り、浮上を助ける操業もあります。1972年の国崎写真資料には、船上から命綱を一気に手繰り上げる様子が記録されています。
浮上後、磯笛で息を整える。
海面へ戻った直後、海女が息を整えるときに聞こえる独特の呼吸音が「磯笛」です。三重大学の資料では、浮上後に磯笛と呼ばれる呼吸法で息を整えることが繰り返し記録されています。これは演出のための笛ではなく、潜水と次の潜水の間にある身体の回復過程です。
浮具や船につかまり、次の潜水へ備える。
徒人では磯桶やタンポ、船人では船縁などが身体を支えます。浮上した瞬間に一回の仕事が終わるのではなく、呼吸を戻し、採取物を処理し、位置を確認し、次の潜水を始められる状態へ戻るところまでが一周期です。
BODY THROUGH LABOUR
海女の身体は「潜水中」だけ働いているわけではない。
海面では呼吸を戻し、波に対応し、浮具を支点に身体を保つ。潜降では身体を下へ向け、海底では視覚と手の作業を同時に行い、浮上では再び海面へ戻る。これを操業時間の中で繰り返します。
だからOCSで海女を描くとき、海底の一瞬だけを切り取ると仕事の半分しか見えません。水面で荒い呼吸を戻す身体、浮具へ重さを預ける身体、冷えた身体を陸で戻す時間まで含めて、海女の労働です。
KACHIDO / FUNADO
徒人と船人では、潜り方が違う。
自力で潜り、自力で上がる。
磯場に近い比較的浅い海域で、磯桶などを拠点に潜水と浮上を繰り返します。三重大学海女研究センターは主な活動範囲を水深5〜8m程度と説明しています。
船上のトマエと二人で潜る。
重りを使って海底へ入り、命綱を介して船上のトマエと連携します。三重大学は10m以上の深い海域でも操業できる形態として説明しています。浮上方法まで含めて、徒人とは身体の使い方が違います。
1972 / DIRECT VISUAL EVIDENCE
写真には「海底」だけでなく、「戻る身体」も写っている。
1972年の海女水中写真では、海底の磯場を探る連続カットの後に、浮上した海女が磯笛で息を整え、浮樽につかまり体を休めるカットが記録されています。国崎の舟人海女では、トマエが命綱を手繰り上げ、浮上した海女が船縁につかまって休む姿も残ります。
FAQ
よくある疑問
海女は酸素ボンベを使いますか?
伝統的な海女漁は呼吸器を使わない素潜りです。潜っている間は自分の一息だけで作業します。
磯笛は本当に笛を吹いているのですか?
道具の笛ではありません。浮上した海女が息を整える際に生じる独特の呼吸音を指します。
海女は全員同じ深さまで潜りますか?
いいえ。徒人・船人など操業形態、漁場、地域、個人によって異なります。潜水深度を一つの数字で海女全体へ当てはめることはできません。
海女は何分くらい潜りますか?
潜水時間には個人差・漁場差があります。次のNodeで、史料や研究で確認できる範囲を分けながら詳しく扱います。
このページは歴史・文化・労働の解説であり、息止め潜水の実践手順ではありません。息止め潜水には意識喪失などの危険があります。実践する場合は専門的な指導と安全管理が必要で、単独では行わないでください。
SOURCES
主な参照資料
NEXT NODE
では、一回にどれくらい潜っている?
次は「海女は何分潜る?」。潜水時間、深さ、休息を、地域差と個人差を分けて見る。
AMA KNOWLEDGE MAP / 01–20
海女を、別の入口から辿る。
01 海女とは? / 02 歴史 / 03 道具 / 04 服装 / 05 潜り方 / 06 潜水時間 / 07 採るもの / 08 徒人・船人・ノリアイ / 09 安乗の海女 / 10 ウェットスーツ / 11 海女小屋 / 12 磯メガネ / 13 磯笛 / 14 カギノミ / 15 白い磯着 / 16 仕事着20年 / 17 船・港20年 / 18 道具20年 / 19 海女小屋20年 / 20 身体・世代20年
